今朝、日本経済新聞の文化面で作家高嶋哲夫氏の寄稿文を読んだ。神戸の震災を経験した高嶋氏は、2004年、地震を主題にした小説「M8」を発表した人だ。新聞にはには、海外の人々がネット上に投げかける地球規模での連帯感に満ちたメッセージに共鳴したとある。
地震がおこってから、私も世界中の友人からメールを受け取った。彼らの多くは関西に拠点を置く私が無事なのは十分承知の上で、日本で起こった悲劇に驚嘆しながら、いたわりの心を添え、声援を送ってくれた。私自身は当事者の迷惑になってはと思い、ほとんど被災地にいる知人に連絡をとろうとはしてこなかったが、こういったメッセージがほんとうに有り難く、心に響くものだということを初めて痛感した。
数日前のテレビ番組で、東北高校出身のダルビッシュ投手が、「野球をしていていいのだろうか」と自問自答するかのように記者に答える姿が印象的だった。行き場のない心の動揺が正直に現れていた。
すでに外国人は政府の意向で早々と国外脱出をした。海外では、原発事故はおそらく日本をチェルノブイリと置き換えた大げさな報道のされ方をしていることだろう。日本の被害の余波がどう自国に届くのか、それぞれの安全を見直していることだろう。日本はひとつのターニングポイントに立った。世界中で最も便利で裕福な国は、あらたな選択をする時期を迎えた。原子力発電所に頼らない生活、それが不便をともなう後退だと考えるのではなく、新たな豊かさの基準を見いだす勇気を持ちたいと思う。世界はこれからますます日本の未来に注目している。
そんななか、今日ニューカレドニアでは日本の被災者のためにミサがあり、募金活動が行われたという。日系人が多い親日家の島には日本の電化製品と車がどこででも見受けられる。フランス本土と島を行き来する飛行機のほとんどが成田か大阪を経由している。長年にわたり交流している立川市とヌメア市では、この時期立川マラソンに参加するために来日していたニューカレドニアの選手が、マラソン中止にともない帰国したばかりだ。
福島県は、戦前ニューカレドニアに341名の移民を送り出している。1910年、ある移民監督は、各県移民を比較した上で福島移民が最も優秀だと報告書に記載している。その評判どおり、満期を迎えて定住した福島県人のなかには牧畜、コーヒー栽培の分野で際立った成功をした人がいた。
彼らの子孫や親族は今も福島周辺に多く暮らしている。心より無事を祈りたい。