H先生の科研の研究会に参加するため、日本文化研究センターまで行ってきました。桂坂も京大桂キャンパスも9号線沿いの大学に通っていた私にとっては目と鼻の先でしたが、ずっと未知の場所でした。ここは(バブル期?に)西武が開発した洒落た住宅街で、そこに続いて日文研、京大が次々と建ったものの、足の弁の悪さは解消されないままのようです。京都駅から45分乗ったバスを降り、日文研までのなだらかな坂道でメジロの群れを至近距離で見かけました。そばには桂坂野鳥園がありますので、いつかのぞいてみたいと思います。
さて、研究会の今回のお題は、H先生が立命のN先生と編集されている、ブラジル移民一世の松井太郎さんの「遠い声」についてです。松井太郎さんの本は、前作の「うつろ舟」に続く二作目、あいかわらず独特の雰囲気を醸し出しています。初めて読んだとき、ニューカレドニア移民一世がいた時代について、私がずっと勝手に想像していた世界に合致する映像が私の脳裏に浮かんできました。移民一世は、地理的にも言語的にも隔離され、異郷の地で彷徨い、孤独に耐え忍んでいる、そいういう感じ、それが具体的な描写がないにもかかわらず伝わってくるのです。報告者のN大のH先生が松井太郎の小説の特徴としてあげた、「辺境とあぶれ者を描くことによってもたらされる無時間制」が原因なのだと思います。うまく説明はできませんが、この不思議な感覚、実際に読んでいただくのがいいのではないでしょうか。
いろいろお話を聞くなかで、ブラジルはニューカレドニアとも北米とはまったく異なる文化圏であることがよくわかり、あらためて一度行ってみたいと思いました。他にもいろいろ勉強になることが多く、初めて聞いた「芸術人類学」など少し調べてみたいと思うこともあり、とても充実した時間を過ごせました。参加させてくださったH先生、ありがとうございました。またお邪魔します!