シドニーから西へ250kmに位置するカウラで開催する「オーストラリアにおける民間抑留」についてのシンポジウム(2014年3月)の企画がだんだん具体性を増して来た。私はそのシンポジウムのスピーカーのひとりになると同時に、カウラ日本庭園内のあるギャラリーで写真展を開催する。
企画の中心になっているのは、オーストラリアの民間抑留研究の第一人者、クイーンズランド大学の永田由利子さんだ。オーストラリアにかつて28カ所の戦時強制収容所があったことを知るオーストラリア国民はほとんどいない。もはや建物がほとんど残っていないのと、オーストラリアにとっては歴史の恥部であると考えられているからだろう。
今回、カウラの日本人墓地にはカウラブレイク(日本人POWの自決)の犠牲者だけではなく、民間抑留者も埋葬されていることを説明する銘板を建てる。それはこのプロジェクトの起点であり、もっとも象徴的な行事である。もともと銘板は当初日英の2か国語で作成される予定だったが、ニューカレドニアからの抑留者数が多いことを考慮して急遽仏語が加えることになった。
銘板の落成式には、日本、オーストラリアなどから集まる元抑留者(当時は子供だった)が列席する。なかには自分の身内がそこに埋葬されている人もいる。他にも、各収容所のある地域の郷土研究家や博物館を管理する人たちも集まる。地域に根ざし、町が負った収容所の記憶が忘れられないように貢献してきた彼らの長年の功績は大きい。私のような研究者も彼らにずいぶん助けてもらっている。
マイナーな研究分野であるオーストラリア民間抑留ではあるが、こうして少しずつ専門家と当事者と地域の自治体や市民の協力で、歴史のなかから掘り起こしていくことができるのではないだろうか。その繰り返しのなかで、少しずつ認知されていくことを期待したい。
まずはWEB(英語)http://nikkeiaustralia.comをご覧いただきたい。日本語の案内(シンポジウムの概要、元抑留者が企画する日本からのツアー)も、PDFデータをダウンロードできるように近いうちにしたい。